調停について
調停について訴訟と混同しておられる方は少なくありません。訴訟は事実を確定させ、法を適用して強制的に紛争を解決する手続きです。それに対して、調停は基本的に話し合いです。基本的には、事実関係について(たとえば、夫が浮気をしていたか否か等)確定させる手続きではありません。したがいまして、調停に臨むにあたっては、証拠などをきちんと整理をして提出しなければならないということは基本的にはありません。もちろん、証拠などが揃っていれば相手を説得しやすいというメリットはありますが、どんなに証拠が揃っていたとしても、相手が同意をしなければ慰謝料などの損害賠償を支払わせることはできないのです。
それでも、訴訟になった場合の見通しを踏まえて調停委員による説得が期待できる場合もあります。したがいまして、当事者同士の交渉では平行線のままであるような紛争については、調停に持ち込んで調停委員の説得によって紛争を解決することも大いに期待できるわけです。
調停の場合は、ご本人の出頭が原則になります。これに対して訴訟の場合は、本人尋問や和解期日以外は、弁護士である代理人に任せておけば、いちいち出頭をする必要はありません。
調停がまとまる、あるいは、決裂するまでにどの程度期間が必要なのかはよく伺う質問です。これはまさにケースバイケースですが、離婚調停において話し合いの余地が少ない場合は、2,3回で調停が不成立になってしまいます。これを不調と言います。これに対して、調停がまとまる見込みがあるのであれば、期日は4回、5回と続きます。長い場合ですと1年近くかかるケースもあります。離婚調停で長期化する場合は、親権や財産分与をめぐる争いでなかなか合意ができない場合です。これに対して、婚姻費用の調停は、生活費に関わることなので比較的短期間に調停が進行する傾向にあります。
調停で気をつけることは、調停は話し合いとはいえ、調停がまとまって調停調書に記載がなされますと訴訟における判決と同じ効力があることです。したがいまして、後になって調停の内容を変更したいと思っても、変更することは極めて難しいということです。よく耳にする誤解の内、甚だしいのは親権者変更です。いったん親権者について調停がまとまってしまいますと、よほどのことがない限り親権者の変更は認められません。妻の側で、子どもが生まれたばかりで収入がないために、泣く泣く夫に親権を譲り、後に正職員として働ける職場を見つけて自活できるようになったとしても、そのことだけでは親権者の変更は認められないのです。
したがいまして、今後の影響も十分に考慮して調停の内容を決めるべきであることはくれぐれも注意をしておいてください。